商業的な邦題。物理学と認知科学・音楽(特にショパン)を組み合わせるという意欲的な構成だが、それぞれの話を絡み合わせることには失敗している。認知科学の話は他と独立に一章割かれているだけだし、楽譜が時空図だという発想もそれ以上に発展するわけではない。タイムトラベルにあまり関係のない特殊相対論の数式をたくさん出すことで潜在的な読者を減らしている反面、重要な話は読んでもよくわからない程度で終わっている。ただ、読みたいと思わせる文献がたくさん紹介されていたのはよかった。ノーマン・スピンラッド『時間草』やポール・ネイン『タイムマシン』、Pickover, The Paradox of God and the Science of Omniscience など。