大熊肇『文字の組み方』(誠文堂新光社, 2010)に、間違ったルビの使い方として「グループルビしか使っていない」例がしょうかいされている。図の例文が説明を兼ねるという、ちょっとおもしろい作りの本なのだが、次のようなルビの振り方は間違いだという。
気質(グループルビ)(p. 94)
ルビは次のように振るのが正しい。
- 気質(モノルビあるいは対字ルビ)
- 気質(グループルビあるいは対語ルビ)
モノルビの場合でも、難しい字だけでなく、語全体にルビを振るものらしい。
さて、HTMLでは、ルビは「<ruby>気質<rt>かたぎ</rt></ruby>」という具合に、ruby要素とrt要素を使って表現するのだが、これではルビのレンダリングに対応していないウェブブラウザでは「気質かたぎ」と表示されてなんのことかわからなくなってしまうため、rp要素を補助的に用いて「<ruby>気質<rp>(</rp><rt>かたぎ</rt><rp>)</rp></ruby>」という具合に表現する。こうすると、ルビが括弧で囲まれるようになる。
手元のブラウザでは、IE 8とChromeではルビをルビとして表示できるが、OperaとSafari, Firefoxではできない(Firefoxはアドオン「XHTMLルビサポート」を入れればルビをルビとして表示できるようになるが、動作がかなり重くなるため、『ドグラ・マグラ』を読むのはやめておいた方がいい)。
ルビをルビとして表示できない環境では、「気(き)質(しつ)」よりも「気質(きしつ)」のほうが読みやすいだろう。文字を組むと言っても、従来の原則をそのまま受け入れてはいけない場面がウェブにはたくさんある気がする。
『文字の組み方』訂正箇所(参考文献に関する「本当に丸写しかどうかは未確認」という追記は、ちょっと物議を醸した結果らしい)
ルビと言えば、『フィネガンズ・ウェイク 1』に寄せられた大江健三郎さんの序文に、次のようなものがあった。
読み手はまず当の漢字を見ているのであって、少なくとも二種の表記を同時的に—多声的にといいたいほどだ—視覚的にも聴覚的にも受け取っているのだ。たとえば、大江健三郎というような、あるいは大江健三郎というような……(p.13)
柳瀬尚紀『日本語は天才である』(新潮社, 2009)の第5章「かん字のよこにはひらがなを!」でも、この話は紹介されている。