数学文章作法 基礎編

448009525X結城浩『数学文章作法 基礎編』(筑摩書房, 2013)(参考文献リストあり・索引あり)

『数学ガール』で独自のジャンルを打ち立てた著者による文書読本。①文章の書き方を学んだことのないすべての人向けの部分(1~3と7, 8章)と、②数式を含む文章を書く人向けの部分(4, 5章)、③教科書のようなものを書く人向けの部分(6章)からなる。

コンパクトにわかりやすく書かれているのがとてもよく、①の部分、特に最初の3章は、いわゆる理系ではない人にも勧められる。ただし、タイトルに「数学」が入っていることが、理系でない人に勧める際の大きな障害だ。最初の3章だけ読むことのコストパフォーマンスも・・・

文章読本はほかにもいろいろあるが、本書には、『数学ガール』の執筆において著者がしている工夫を垣間見るという、副読本的な楽しみ方ができるという特徴がある。例示Aすると、『数学ガール』で例示Bが少ないところは、著者にとって理解Bが難しいところの例示Cなのだと、理解Cするようになる、と理解Aした(「例示は理解の試金石」)。

細かいこと

  • 形式が大切であることに異論はないが、欠けたカップで出されても、おいしいコーヒーはおいしいと思う(p.27, 181)。
  • 「a, b, c, d, eは定数」などという文字の使い方がp.104で紹介されていて、こういうことまで教えるのはさすがだと思ったのだが、これはどのくらい一般的なものなのだろうか。(数学の特定の分野の話?)
  • 4121006240参考文献でも挙げられている木下是雄『理科系の作文技術』(中央公論社, 1981)の、「式も文の一種とみてコンマやピリオドをつける(p.168)」というたてまえを、採用しないのはいいとして、紹介くらいはしてもよかったのではないだろうか。