闘うプログラマー

闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達 (単行本(ソフトカバー))G・パスカル・ザカリー著, 山岡洋一訳『闘うプログラマー』(日経BP, 2009)

副題:ビル・ゲイツの野望を担った男達。

1994年に出た翻訳が最近復刊して話題になっていました。私の手元にある旧版は2巻なので、それが1冊になっただけでも新しい読者にはいいことでしょう(旧版のほうがかなり安く入手できるでしょうが)。

これはWindows NTの開発現場を描いたノンフィクションです。NTの初期バージョンであるWIndows NT 3.1が発売されたのは1994年。その後、NT 4.0 (1996)と2000 (NT 5.0)とXP (NT 5.1), Vista (NT 6.0), 7 (NT 6.1)と続いています。この系列に属さないWindows 95などは、安定性に大きな問題がありましたが、95から98ではなくNT 4.0に移行した私は、「OSが不安定だからこまめにセーブしよう」などということにはならずに生きてきました。95→98→Meだった人は大変だったと思います。

現在の最新OSであるWindows 7は、1994年のNT 3.1とアプリケーション及び操作性において、かなりの互換性を保っています。後方互換性をあまり重視しないMacと比べて、どちらがいいかということは一概には言えませんが、すごいことではあります。「MacとWindowsではMacのほうが進んでいる」ということがよく言われますが、現在の基準から見れば必須と思われる機能の多くは、当時のWindows NTにはあって、Mac OSにはなかったことを忘れてはいけません。本書を読むと、そのことを改めて思い出させられます。

そのほかにも、史上最大規模のソフトウェア開発がどのように進められたのか、Windows NT開発におけるビル・ゲイツの役割、マイクロソフト社員の仕事と家庭など、興味深い話題はたくさんあります。

わたしは電子の歌をうたう―マイクロソフトがマルチメディアに挑んだ1年 (単行本)そもそも、世界最大のソフトウェア会社におけるソフトウェア開発の裏側ですから、興味深くないはずはありません。エンカルタの開発現場を描いたフレット・ムーディ『わたしは電子の歌をうたう』(早川書房, 1997)を楽しめた人は、本書もきっと楽しめるでしょう(本書を楽しめた人は、『電子の歌』もきっとたのしめます)。

原題はShowstopper。辞書を引くと「演技を中断させるほどの長い喝采を受ける演技[歌、役者]」とありますが、ここでは「オペレーティング・システムが実行する『ショーがストップする』ほど深刻なバグ(上p.33)」の意味で使われています。

邦題は『闘うプログラマー』。「Showstopperでは売れない」という判断があったのでしょうが、プログラマー以外にも多くの人が重要な役割を演じる本書にこの邦題はふさわしくありません。ソフトウェア開発の現場での職種による差別は本書の話題の一つではありますが、邦題でそれを際立たせる必要はないでしょう。

「ビル・ゲイツの野望を担った男達」という副題も、複数の女性が活躍する本書にはふさわしくありません。Showstoppingだとまでは言いませんが。