カーニングがおかしいんです。
どちらかと言えば、これはWordの問題と言うよりはフォントの問題だという気もしますが、たとえば、Adobe InDesignならカーニングとして「オプティカル」を選択すれば、ここで紹介する問題は(だいたい)回避できるので、Wordが無責任だとは言えないでしょう。
カーニングの問題とは、次のようなものです。
Times New Romanは特にひどいです。デフォルトの文字間隔で組むと、このように隣り合う文字が重なってしまいます。素人臭さをなくすためには、文字単位で間隔を調整しなければなりません。fの後の文字間隔を1ptにすれば、下のように解決できるのですが、これはかなり面倒なことです。
Palatinoは何もしなくても大丈夫です。
Garamondは調整が必要です(fの後の文字間隔を2ptにしなければなりません)。
似たような問題は、括弧の中にイタリック体を書いたときにも発生します。下はTimes New Romanの場合です。
今回もPalatinoは大丈夫です。
この例のような問題は、文字間隔ではなくベースラインを調整することによって解決するものなのかもしれません。しかし、下の例のGaramondでは、間隔の調整も必要でしょう(左括弧の後と6の後の文字間隔を2ptにしなければなりません)。
以上のような問題を放置すると、見た目がとても素人臭くなってしまうので要注意です(江渡浩一郎『パターン、Wiki、XP』は、この点でちょっと損していると思います。まさかWordで組版したわけではないでしょうが)。とはいえ、文字間隔を個別に調整するのは面倒なので、最初に書いたように、Adobe InDesignのような、高機能なソフトウェアの利用を検討した方がいいでしょう(ただし、InDesignもGaramondはちょっと苦手かもしれません)。
気を遣うのが面倒な人は、デフォルトの欧文フォントをPalatinoにしてしまうのも1つの手です。Palatinoなら、ここで紹介したような問題は起こりにくいようです。ちなみに、OfficeにはBook AntiquaというPalatinoに似たフォントが搭載されていますが、Palatinoの作者であるZapfさんが次のような発言をしています。
「大手ソフトウェア会社が『Book Antiqua』と称し Palatino の低級なコピーを搭載しているが、私の方には何も知らされておらず、デザインの修整もできないし、当然1セントのロイヤリティも支払われない。大会社ならば、みずから最高の Palatino を開発して使うべきではないのか。書体制作には数年間かかるが、それをコピーする側は何の手間もかけていない。何も知らないユーザは、その会社が書体の開発費を正当に払っているものと思いこむのではないか」(小林章『欧文書体2』 p. 93)
というわけで、Book Antiquaは使わない方が良さそうです(書体の開発費のことを考えているユーザなんてほとんどいないと思いますが)。Palatinoという正統のフォントがWindowsに搭載されているにも拘わらず、Book Antiquaというまがい物をOfficeに入れておかなければならない理由がよくわかりません。そういう趣味があるなら、Arialというまがい物だけでなく、Helveticaも搭載してほしいものです。
各フォントの各文字にどのようなカーニング設定がなされているかは、fontforgeを使えば確認できます。
ピンバック: 論文作成動画講座 第14回 論文独特の表記ルール① | 青木宣明のブログ
ピンバック: 文書を見やすくためにフォントを選ぼう | 青木宣明のブログ
ピンバック: 【コンピューター】 最近話題になったイケてるWebサービス・アプリ10選(2015年5月編) | creive【クリーブ】 2015年05月31日 夕刊 | aquadrops * news