THE BIG SWITCH

クラウド化する世界 (ハードカバー)邦題『クラウド化する世界』(ニコラス・G・カー著)

電力資源の確保方法の変化と計算資源のそれとを対比させた第1部「一つの機械」と、クラウド化による世界の変化への警鐘を鳴らす第2部「雲の中に住んで」からなる。(邦題は内容を矮小化しているのではないだろうか。)

さすがにこの業界にいれば、この本で初めて知るような話はないのだけれど、以下の引用部分が何を言っているのかよくわからない人は、第10章「クモの巣」だけはちゃんと読んだ方がいいと思う。

一般に行政府は、オンラインの世界を旧来の地政学的境界線に沿って分割し始めている。そればかりでなく独裁主義的政権は、インターネットはその権力にとって、当初恐れたほどの大きな脅威を引き起こすものではないと悟り始めている。(p.239)

引用の引用

「誰もが人生の途上で、数多くの質問が記載された数多くの記録書類に記入する」と、アレクサンドル・ソルジェニーツィンが小説『ガン病棟』に書いている。「一つの書類の一つの質問に対する答えは、細い糸となって、その人を個人記録管理局の地方センターに永久に結びつける。こうして、何百という糸が一人の人間から放射して、全体では何百万もの糸となるのだ。これらの糸が突然目に見えるようになれば、空全体はクモの巣のように見えるだろう・・・誰もが、この見えない糸を常に意識して、ごく自然にその糸を操る人々に対する敬意を育むのだ」(p.250)

「敵意」ではないところがさすが