本明朝を使いたい

少し前に「古きMacを温ね新しきUIを知るか」というエントリで、「古いMacを引っ張り出して使ってみると、古典を読むような気分になれて面白い」というようなことを書いた。

今回はもう少し実用的なことを書く。

漢字Talk 7.5にはかつてCD-ROM版というのがあって、これに今Appleから無償配布されているものには含まれていないものが収録されていた。その一例が日本語フォント。フォントフォルダの中身はこんな感じ。

日本語フォントだけ並べてみる。

  • Osaka:昔からのMac好きが好きなフォント。アウトライン部分は平成角ゴシック。Mac好きが「平成角ゴシックが好きっ!」なんて言うはずもないから、愛されているのはビットマップ部分なのかな。そのくせ、「ビットマップフォントなんてありえない」とか言ったりするんだよなあ。
  • リューミンライト:言わずと知れた、DTPの代表的な日本語明朝体。このフォント自体はきれいだと思うけど、どうしてこれがデファクトになってしまったんだろう。MS明朝が本明朝Mでなく本明朝Lをもとに作られたのだって、Lがデファクトだったからでしょう(知らないけど)。Lって、TimesやPalatinoとウェイトが合わないんだよねえ。Wordのデフォルトの組み合わせが、MS明朝+Times New Romanじゃなくて、MS明朝+Centuryなのも、きっとそのせい(知らないけど)。Knuth先生のComputer Modernは細いから、TeX使いには好都合だったか(ちなみに、1冊全部CMの解説にあてたKnuth『Computer Modern Typefaces』はけっこう楽しい)。
  • 中ゴシックBBB:DTPの代表的な日本語ゴシック体。リュウミンLと中ゴシックBBBの組み合わせが、ヒラ明・ヒラ角ゴからダメ出しされるのは、まあ、しょうがないか(とはいえ、ヒラ明はちょっと本格的すぎるところがあって、使いにくかったりもする)。
  • 本明朝:後述
  • 丸ゴシック:「丸ゴシックかわいい」って言ってた人も、「HG 丸ゴシック」と名前を変えてOfficeに収録されるとバカにしたりするんだよ。

本明朝は玄人好みの書体で、OptimaやPalatinoの作者であるZapfさんへの贈り物として作られたタイポグラフィ作品集「30センチメートルの友情」でもよく使われているし、この書体を題材にした書籍さえ出版されている(片塩二朗『逍遙本明朝物語』)。

1ウェイトだけだし、時代ものだけに第2水準漢字までしか入ってないとはいえ、ちゃんと使える本明朝に、こんなところで出会うとなんだかうれしい。でも、「リュウミンL+本明朝M」よりも、「リュウミンL+M」や「本明朝L+M」のほうが、いろんな意味でよかったんじゃないかなあ(当時はどうやって使い分けていたんだろう)。

「買えばいいじゃん」と思う人(私含む)は、買えばいいわけなんだけど(Amazonにもあるし)、まあ、ちゃんとした書体は値段もちゃんとしているわけで・・・。CD-ROM版漢字Talkなら、オークションで500円くらいで買えるでしょう。