「主人公がラストで特攻したら奇跡」という点において、『風の谷のナウシカ』は『さらば宇宙戦艦ヤマト』のパクリだそうです。こういうパクリの関係を大量に集めて視覚化したパクリの系譜ネットワーク(≠ツリー)が、岡田斗司夫『オタク学入門』(太田出版, 1996)に掲載されています。(新潮OH!文庫版・新潮文庫版)
ノードの関係だけを再現すると下のようになります(クリックで全体表示)。『オタク学入門』に掲載されているのはもっと詳しくて、先ほどの「主人公がラストで特攻したら奇跡」のような説明がエッジに付けられています。
すべての物語のパターンは聖書に含まれる47種類で尽きている
というように、整理の仕方を根本的に変えるなら、パクリの系譜をツリーで表現することはできるかもしれませんが、とりあえずは、パクリの系譜はツリーではありません。ツリーで整理できればそれはすごいことですが、ネットワークの段階で、オタクのすごさは十分伝わります。
そういえば、「都市はツリーではない」なんていう話もありました。オブジェクト指向プログラミングにおいて、クラス階層を厳密なツリーにしようとすると、面倒なことがありました(プログラムそのものはツリーで表現できますが)。
三中 信宏, 杉山 久仁彦『系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク』(NTT出版, 2012)を読みながら、こんな話を思い出していました。この本には、分類・整理したいという人々の欲求を満たすために描かれてきた数々の歴史的なチェインやツリー、ネットワークが掲載されています。そのデジタル版とも言える『ビジュアル・コンプレキシティ―情報パターンのマッピング』とあわせて手元に置いておきたい一冊です。
『系統樹曼荼羅』によれば、ダーウィンは「系統樹」ではなく「ダイアグラム」という語を用いたそうですが、逆に、なぜこの本のタイトルは「ダイアグラム」ではなく「系統樹」だったのでしょう。「マルコによる福音書」に関する写本系統ネットワークのように、ツリーでは表現できないものもちゃんと紹介されていますし、「プログラミング言語の巨大な系統樹(ネットワーク)」というような表現もあるので、ツリー(樹)とネットワーク(網)の区別はどうでもいいような気もするのですが、次のようなどうでもよくない記述もあります(このあたり、もう少し掘り下げてほしかったかもしれません)。
直線性(「鎖」)あるいは階層性(「樹」)は、われわれ人間にとって、オブジェクトの多様性に関する記憶と体系化の補助となり得る。しかし、非階層性(「網」)にはそのような利得は期待できない。(p. 40)
バラバシ『新ネットワーク思考』(NHK出版, 2002)が出てもう10年になりますが、分類と整理、そして記憶、こういう試みが難しそうなところにも、いろいろと面白い話はある気がします。
追記:食べるラー油達の系統樹