コンピュータ科学者がめったに語らないこと

コンピュータ科学者がめったに語らないことD・E・クヌース(訳:滝沢徹、牧野祐子、富澤昇)出版社: エスアイビー・アクセス ; ISBN: 4434036173 ; (2003/09/18)

原著:Things a Computer Scientist Rarely Talks About by Donald E. Knuth (Stanford, California: Center for the Study of Language and Information, 2001), xi+257 pp. (CSLI Lecture Notes, no. 136.) ISBN 1-57586-327-8(原著のホームページ

計算機科学の神クヌースがMITで神について語った講義(ビデオ)の記録。聖書の各文書から3章16節のみを抜き出した(全59節) 3:16プロジェクトの紹介し、それにまつわるさまざまな話題を計算機科学の視点から解説している。

話題はランダム・サンプリングの有用性や教育との関連に始まり、言語翻訳、美学(著名なカリグラフィー書家の作品を見せながら)、有限対無限という見方の誤り(有限にも神は宿る)、ライフゲーム、自由意志に及ぶ。

計算機科学の神らしい発言もいくつか:

  • だめなアイディアが確立されて多くの人々を巻き込むと、ひそかに満足感を覚えるのですよ。例えばJavaプログラミング言語とか・・・[というのは、ほんの冗談。](p.15)
  • コンピュータ科学の研究において、私は最悪の場合を想定することが好きだったためしがありません。(p.44)
  • 現在、計画中のThe Art of Computer Programming第4巻の演習では、バーコフの基準で最適とされる音楽を読者に作曲してもらいます。どういう音楽になるか見ものですね。(p.94)
  • 科学は、コンピュータに説明できるくらい私たちがよく理解していることであり、芸術はそれ以外のすべてなのです。(p.168)
  • 実数を現実世界に完全に適用できると考えるのは大変な盲信です。(p.175)

そのほか、「合理性の限界に関する、いろいろなレベルで優れた寓話」としてスマリヤンの短編Planet Without Laughterが紹介されている(訳者によればここで翻訳を公開予定らしい)。

誤訳があったためにプロジェクトの終了後に訂正されたという、ヨハネによる福音書3:16のカリグラフィーはこちら(ちなみに、クヌースを悩ませた、各福音書で異なる「永遠の生命を持つ」の意味は、私の手元にあるフランシスコ会聖書研究所訳では区別されていないようだ)。