フォントのグラデーション

LaTeXのパッケージ、Multiple font formats (mff)を使うと、フォントComputer Modernのパラメータをいじって別のフォントを作ることができる。パラメータを少しずつ変えれば、フォントのグラデーションに。

フォントのグラデーション

ソースコードは次の通り。

\documentstyle[mff]{article}
\pagestyle{empty}
\clearMFF\setMFF[0.8]{cmr}\setMFF[0.2]{sf}\MFFgener{\fontoo}{oo}{10pt}
\clearMFF\setMFF[0.6]{cmr}\setMFF[0.4]{sf}\MFFgener{\fontoi}{oi}{10pt}
\clearMFF\setMFF[0.4]{cmr}\setMFF[0.6]{sf}\MFFgener{\fontio}{io}{10pt}
\clearMFF\setMFF[0.2]{cmr}\setMFF[0.8]{sf}\MFFgener{\fontii}{ii}{10pt}

\begin{document}
A{\fontoo A}{\fontoi A}{\fontio A}{\fontii A}{\sffamily A}
\end{document}

たとえば\clearMFF\setMFF[0.4]{cmr}\setMFF[0.6]{sf}\MFFgener{\fontio}{io}{10pt}というのは、Computer Modern Roman (cmr)とComputer Modern Sans Serif (sf)を6:4で混ぜたフォント(io)を作り、\fontioで使えるようにするということ(ioというのは私が勝手につけた名前)。

このソースコード(f.tex)は、次のような操作でPDFになる(Windows上のTeXLiveで動作を確認した。mff.zipを展開したディレクトリで作業するのが簡単)。

platex f
for %f in (*.mf) do (mktextfm %f)
platex f
dvipdfmx -r 2400 f

Bashではこんな感じか。

platex f
for file in *.mf ; do mktextfm $file; done
platex f
dvipdfmx -r 2400 f

メタマジック・ゲーム―科学と芸術のジグソーパズルDigital Typography (Csli Lecture Notes, 78)このようにパラメータを少しずつ変えて生成したフォントを使った作品の最高傑作が、『メタマジック・ゲーム』のp.231や、『Digital Typography』のp.299に掲載されている。残念なことに、ウェブでは見つからなかったから、真似して作ってみた(文章は『茶の本』から)。

センチメートルの友情

「g」はセリフとサンセリフでぜんぜん違うと思うかもしれないが、サンセリフでも丸2つになっている書体はある。たとえばGill Sans(このフォントはMac OS XやMicrosoft Officeに含まれている)。

Computer Modern Typefaces (Computers and Typesetting, Vol E)パラメータで記述されるフォントについてのすばらしい考察が先述の『メタマジック・ゲーム』に、フォントComputer Modernがどのようなパラメータで記述されているかが『Computer Modern Typefaces (Computers and Typesetting, Vol E)』にすべて載っている。

『30センチメートルの友情』がもう一つのネタもと。

追記:フォント作成に詳しくなくても大丈夫、自分好みのフォントが簡単に作成できてしまうオンラインサービス -metaflop

ボイドキューブ

メタマジック・ゲーム―科学と芸術のジグソーパズルホフスタッダーは名著『メタマジック・ゲーム』の中でルービックキューブについて次のように書いている。

はじめて電話でキューブの話を聞いたとき、私は物理的にあり得ないとまず思ったものだ。どう考えたって、おのおのの小体(略)がバラバラにならぬはずがない。(p.289)

この話を読んで、次のページに掲載されたルービックキューブの分解図を見て育った私は、さすがに「物理的にあり得ない」とか「実物を見るまで信じない」などということにはならないのだけれど、手に取ってみたい誘惑には逆らえず、1つ買ってきました、ボイドキューブ

Void Cube - ボイドキューブ -このメカは、ちょっとすごいです。

思えば、『メタマジック・ゲーム』というのはすごい本で、長く興味を持ち続けている話題の多くが、この本にルーツを持っている。P.293で紹介されているルービックキューブと素粒子物理学の類似もその一つ。例えば、

素粒子の世界では、足してちょうど整数値になるような電荷を持つクォークの組み合わせしか許されない。キューブの世界でも、ねじれの総計が整数値になるようなクォークの組み合わせしか許されないのである。(p.294)

ルービックキューブ雑感

もっと文字を知る、文字を使う。

B000W4L4AO+ DESIGNINGが月刊化した。

創刊号「もっと文字を知る、文字を使う」は、書体の選び方とか文字の組み方といった技術的なことではなく、「文字とは何か」のような、より基本的なテーマに重点を置いたものになっている。たとえば、『アジアの本・文字・デザイン』の杉浦康平さんの対談なんかも。

アジアの本・文字・デザイン―杉浦康平とアジアの仲間たちが語る

そういえば、古い知り合いから「ずいぶん文字への興味が続いているねえ」なんてことを言われた。「文字に興味が無くなる」なんてことがあるのかどうかはよくわからないけど、出発点はこのへんですよ。

知能の問題とは、心の柔軟性、母親の顔といった知覚対象にある固有不変の性質、またイスとか文字aのように他の似たものとの区別境界が不思議な具合に柔軟でありながら、それでも区別がつくという性質を探求することである。コンピュータが出現するずっと前、すでにウィトゲンシュタインがこのことの重要さに気付いていた。私はこれを強調するために次のテーゼを提唱したい。

AIの中心課題は、「文字aとはなにか?」である。

ドラルド・クヌスがこれを聞いて、「文字iとはなにか?」を付けくわえるといいと教えてくれた。たしかにこれはいい。

AIの中心課題は、「文字aと文字iはなにか?」である。(p.621)

ホフスタッダー『メタマジック・ゲーム』のp.234に掲載されているこの絵が好きで、よく学生にも見せています。(ここでも紹介されている。)

ルービックキューブ雑感

B00B3ML5WG

メタマジック・ゲーム―科学と芸術のジグソーパズルパズル好きはもちろん、数学マニアや物理マニアの間にも根強い人気があるルービックキューブ。

単なるパズルという認識しかない向きは、まずホフスタッター『メタマジック・ゲーム—科学と芸術のジグソーパズル』がおすすめ。

マジックキューブは単なるパズルを超えている。巧妙な機構の発明、気晴らし、教育玩具、教訓のタネ、また、創造の刺激がそこにある。(旧版p.288)

数学や物理との関係については、1個の隅の小体を時計回りに1/3回転させたものをクォーク、反時計回りに1/3回転させたものを反クォークと呼べることを指摘しておけばよいだろう。

数学的な話を追求したいならば、Bandelow. Inside Rubik’s Cube and Beyond. ホフスタッターによれば、「おそらく、英語で書かれたキューブに関する本としては最高(旧版p.797)」。絶版だがどこかで見つかるだろう(私はAmazon.comで購入した)。新しいものとしては、David Joyner『群論の味わい—置換群で解き明かすルービックキューブと15パズル』(共立出版, 2010)がある。Joynerの講義録 Mathematics of the Rubik’s cube はより本格的だ。

Rubik’s Cube と群論がよくまとまっている。

頭を鍛える ルービックキューブ 完全解析!解くスピードを究めたいなら頭を鍛える ルービックキューブ 完全解析!。昨年出版されたムックだが大きな書店にはまだ残っているかもしれない(これは皮肉ではない)。

自分で解くのが面倒なら、Rubik’s Cube Solving Robotに任せればいい。

ルービックキューブの拡張には、2つの方向がある。

一つめは、セルの数を増やすこと。

B0002YNTES拡張とは言いにくい2x2x2

B0002U3OXS4x4x4

B0007OP64O5x5x5

B0007OP64O6x6x6

B003OIBDC47x7x7

B003OIBDC49x9x9

B003OIBDC410x10x10

二つめは、次元を増やすこと。

「次元」を聞いて「時間軸」を思い浮かべる人は、この世界に縛られているのかもしれない。残念なことに時間軸に関わる回転を取り入れた拡張はまだない。あるのは、空間次元を増やしたものだ。もちろんこの世界でそのまま遊ぶことはできないため、展開図をコンピュータで描いて解く。4次元版(MagicCube4D)と5次元版(MagicCube5D)がある。球面が4次元以上では「超球面」と呼ばれることから考えると、キューブも「超キューブ」になるべきと思うのだが、どちらも名前はキューブのまま。

拡張とは言いにくいがRubik’s Plateもある。なぜSquareでなくPlateなのかというと、裏表や回転というSquareにはない概念を使っているから。これなら、できなくて気まずいという思いをすることはない。考えなくていいという意味でも日本人向き。

グリッド数 次元
2 2x2x2 Rubik’s Plate
3 3x3x3
4 4x4x4 MagicCube4D
5 5x5x5 MagicCube5D
6 6x6x6
7 7x7x7
9 9x9x9
10 10x10x10
11 YouTube
13 YouTube
17 YouTube
20 YouTube
22 YouTube
28 YouTube
80 YouTube
100 YouTube
1000 YouTube

MagicCube5D

2010年に,トーマス・ロキッキ,ハーバード・コシエンバ,モーレー・ダビッドソン,ジョン・デスリッジによる数学者,技術者,計算機科学者のチームが,グーグルによって提供された350CPU年という計算時間を使って,神の手数が20であることを示した(『対称性』p.100)