Zenが武宮正樹九段に4子局で勝利した昨年に続いて、今年はCrazy Stoneが石田芳夫九段に4子局で勝利してしまいました(Zenは石田芳夫九段に4子局で敗北)。
昨年のZenの勝利は、Zenの商用パッケージである天頂の囲碁4のいい宣伝になったことでしょう。
今年のCrazy Stoneの勝利も、Crazy Stoneの商用パッケージである最強の囲碁2012の宣伝になるといいですね。
私はどちらにも勝てません。
『ヒカルの碁12巻』での佐為のセリフです。「いい碁盤はカヤなんです!」(ちなみにヒカルの碁12巻では日本の元総理大臣をモデルにしたキャラクターが、とても重要な役で登場しています。)
私が今使っている碁盤はコンピュータのディスプレイ、将来使う予定なのはElectronic Go Board by Tommy Chenなので、高価な榧の碁盤を持つことはないだろうと思っていたのですが。
榧盤デビューしました。
五路盤はすでにコンピュータで解かれていますが、七路盤はどうでしょう。
囲碁名人戦(朝日新聞社主催)。10代での名人位獲得を期待されながらも惜敗した前期に引き続き、2年連続しかも予選リーグ全勝という圧倒的な強さを見せつけて挑戦者になった井山裕太さん(20)。7大タイトルのうち5つを保持する張栩さんから、見事4勝1敗で名人位を奪取されました。
史上最年少名人、おめでとうございます。
師匠の石井九段(きゅうだん)のエッセイ『わが天才棋士・井山裕太 』の出版のタイミングが絶妙でした。2年連続で挑戦者になった時点で書かれたものですが、今季の名人戦が終わった時点で書くのが相場でしょう。そうしなかったのは、名人を取れなくてがっかりした感じになる危険を避けたかったからだと考えるのが相場でしょうが、もしかしたら名人奪取のタイミングを読み切っていたのかもしれません(だとすれば4勝0敗を読んでいた?)。
将棋では「日本将棋界≒将棋界」なのに対して、囲碁では「日本囲碁界≠囲碁界」です(参考:囲碁と将棋の違い)。ずいぶん前から「日本囲碁界の宝」と言われてきた井山さんですが、「囲碁界の宝」と言われるようにがんばってほしいです。
2006年に『ウェブ進化論』でスマッシュヒットを飛ばした梅田望夫さんが、インタビューで「日本のWebは残念」だと発言したそうです(Web、はてな、将棋への思い 梅田望夫さんに聞く)。
最近の梅田さんは、ちょっと弱気になっているようです。たとえば、ひろゆきとの対談を断ったという話を、『本人 vol.09』でひろゆきさんが披露していました。
もし彼に度胸と自信があれば、たぶん一緒に議論をして、どっちが正しいか決めよう、もしくはお互いの間違いを認めようってなると思うんですけど、たぶんそういうことをしたら、自分の状況が不利になるぐらいの計算は立つ人だと思うんですよ。
そんな弱気な梅田さんに、たくさんの人が励ましの言葉を寄せています。
梅田さんは「ところで、お前はてなのコードどんだけ書いたの?」とつっこまれたり、「ポジショントークの人」と言われたりしているので、どちらかといえば軽く見られているのだと思っていました。そういえば、『本人 vol.09』では、ひろゆきさんにこんなふうに言われていました。
もともとあの人って、コンサルタントじゃないですか。だからインターネットはこれからうまくいきますよとお金を持っている人に言って、投資をお手伝いしますよ、その代わり手数料をくださいというビジネスでしょう。そうすると、インターネットは夢がありますって言わないと仕事にならないじゃないですか。
しかし、実際はそうではなかったようです。たくさんの人が梅田さんの発言に注目し、貴重な時間を費やしてコメントしています。ウェブ業界のスターたちも例外ではありません。私なんかもうリンクを張るだけでおなかいっぱいです。
でも、なんて言うか、励ますならまず、梅田さんの最近の著作について暖かいコメントを出して、Amazonへのリンクを貼ったりしてほしいです。大部分の人が「将棋」をスルーしているじゃないですか。「ロジックの通じる友達が多いです」というひろゆきさんでさえ、次のような勘違いをしたりするんです。こういう誤解をロジカルに解くなんていうのは、梅田さんにぴったりじゃないですか。
囲碁や将棋って持ち時間があるでしょう? そうすると、相手に迷惑をいくらかけても、長く考えたやつの方が強いんです。(『本人 vol.09』)
梅田さんと将棋に関する発言で、私の目にとまったのは切込隊長さんのものだけです。曰く、
将棋とシリコンバレーなんてどうでもいいだろ、正直なところ
これでは台無しです。どうでもいいなんて言わないでください。
こんな感じで書いてもらいたいのです(参考:404 Blog Not Found)。皮肉を言っているように見えるかもしれませんが、そういう意図はありません。
私の想像ですが、梅田さんは次のような図式で日本の文化を整理しようとしているのだと思います。
グローバル | ガラパゴス |
Nokia | ケータイ |
英語 | 日本語 |
囲碁(チェス?) | 将棋 |
「ガラパゴス」というキーワードで日本を語ることが有意義かどうかの判断にはもう少し時間がかかると思いますが、これまで「ケータイ」と「日本語」しかなかったこの枠組みに、実例をもう一つ追加し、そこに一生懸命スポットライトをあてようとする姿勢はもっと評価されていいと思います。
「羽生さんは日本で一番優れた、日本で一番貴重な人だと思うからね」(インタビュー後編)という発言における、「日本」が「世界」になることはおそらくないでしょう。囲碁の世界選手権に相当するものは将棋にはありません。碁打ちになるか将棋指しになるか悩んでいる子どもにとって、「世界チャンピオン」に成り得るという点では囲碁のほうが魅力的でしょう。その子が大人になる頃に、コンピュータに対して人間が優位を保っているのは、おそらく将棋ではなく囲碁でしょう。外国で書かれた人工知能の標準的な教科書で、オセロとチェス、囲碁が取り上げられているのに将棋が取り上げられていないのは、そんなにおかしなことではありません。(参考:囲碁と将棋の違い)
こういうことに対する梅田さんの悔しい思いに、もっと共感してもいいのではないでしょうか。
梅田さんの新著は、「何語に翻訳してウェブにアップすることも自由」だそうです。これは、ガラパゴスから脱却する方法の一案なのでしょう。それなのに、「どうせならクリエイティブ・コモンズにすれば、日本語版も」とか「日本語版は売れるけど、それ以外は翻訳費用の元が取れないからボランティアにやらせてる」、「お金にならない部分を利用可能にしただけなのに、オープンソースを語るな」とか揚げ足を取らないでください。梅田さんは「オープンソース的協力」と言っているのであって、「オープンソース」と言っているわけではないのです。たいていの場合、「・・・的」と「・・・」とは似て非なるものなのです。(参考:「オープンソース」の二つの意味)
揚げ足取りのネガティブなウェブから高め合いのポジティブなウェブへ。ここまで当プロジェクトがやってきたのは、ポジティブな風を少しでも吹き込めるようにするための土台作りです。(「英訳版「敲(たた)かれ台」がウェブ上に一般公開されました!」より)
梅田さんの言葉の影響力がうらやましいです。
3/22に囲碁のプロ棋士(Catalin Taranuさん、日本棋院五段)とコンピュータが対戦しました
最初のアナウンスはこのあたり? the computer-go mailing listへの投稿
「プロ囲碁棋士と大規模スパコン並列型MoGo(フランス)がまもなく対戦?」で観戦方法が紹介されています。数百人が観戦していました。私もそのうちの一人です
公式サイトサイトでは、9路盤3局と19路盤1局となっていますが、結果を見ると9路盤は4局ありますね。最初の3局がいずれも白勝ちだったから、白黒はっきりさせようと思ったのでしょうか(結局9路盤の対戦成績は五分五分でしたが)
19路盤はハンデを最大にしてもまだまだ勝負になりませんね(私はコンピュータに井目で勝つ自信はありませんが)。何か新しいアイデアが無い限りは、もう現実的になっている「将棋で人間がコンピュータに負ける日」の後も、囲碁は当分大丈夫そうです
黒 | 白 | 条件 | 結果 | ||
---|---|---|---|---|---|
第1局 | Mogo | Catalin Taranu | 9路盤 コミ7.5目 | 白中押し | SGF |
第2局 | Catalin Taranu | Mogo | 9路盤 コミ7.5目 | 白中押し | SGF |
第3局 | Mogo | Catalin Taranu | 9路盤 コミ7.5目 | 白中押し | SGF |
第4局 | Mogo | Catalin Taranu | 19路盤 9子局 コミ0.5目 | 白中押し | SGF |
第5局? | Catalin Taranu | Mogo | 9路盤 コミ7.5目 | 白半目勝ち | SGF |
EidoGoを使って再現しました