三色ボールペン情報活用術


メモ帳について書いたついでに、筆記具についても書いておきましょう。

多色ボールペンの世界が、ジェットストリーム4Cリフィルの登場によって大きく変わりました。単色ボールペンの世界にジェットストリームが登場して以来の衝撃です。

B000UTKMDQジェットストリームの書き味には文句がなくても、その軸のデザインには不満を持つ人が多かったはずです。そのリフィルを他社製の軸で使う方法を求めて、さまざまな試行錯誤がなされてきました(例:なんでもJetstream化プロジェクト)。しかし、4Cリフィルが登場したことで、多くの人がその探求の旅を終えられるはずです。4Cリフィルなら、LAMY 2000 4色ボールペンステッドラー アバンギャルドなど、デザインに定評のある多くの軸で使えるからです。

4047041351多色ボールペンと言えば、何年か前に『三色ボールペン情報活用術』というのがはやったのですが、そこで紹介された使い方は、私には無理でした。

私は本を読むときにもずっと三色方式を実践しているので、あとで読み返したら印象が違った、ということがほとんどない。三色に振り分けてマークしてあるところを見返して、ヘンな引き方をしていたと思うことはほぼない。新たな関心事ができて、ここにも緑色を引きたいというところはあるが、それ以外は変わらない。常に、この本を今以上真剣に読む機会はもうない、そう考えながらやっているからだ。(p.68)

4022643854「俺には無理だわー」という印象がかつてと変わらないという意味ではあたっているのですが、本はあとで読み返すと思って読んだ方がおもしろいんじゃないかと思います。大江健三郎さんも『小説の経験』でこう言っていました。

本を読む際には、赤線を引き、また黒い鉛筆で書き込みをすることを私は若い人たちにすすめてみたいと思います。(中略)はじめに読んだ際と再読する際の間の、時の経過のなかで自分が、どのように変化し成熟したかということを実感してもいただきたい(p.66)

ジェットストリームのパーカー互換リフィルが出たら、筆記具についての考え方がまた少し変わるのではないかと思います(追記:リフィルアダプターが出ました)。4Cリフィルの緑も待っています。

オールタイムベスト筆記具

理想のメモ帳を求めて(コクヨ 測量野帳)


Windowsに標準搭載されている「メモ帳」は、Notepad2をインストールして置き換えればいいとして・・・

いわゆるアナログのメモ帳遍歴には、コクヨの測量野帳に出会ったことで一応終止符を打ちました。

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その良さはすでにいろんなところで語られています。

勢い余ってオリジナル野帳も作ってしまいましたが、結婚式のプチギフトで配ってしまったので手元には1冊も残っていません。

矢吹研オリジナル野帳

Amazonでももちろん買えますが(1冊の値段ではないことに注意?)、一部のコンビニでも手に入るようになってご機嫌です(参考:ミニストップで野帳が売っている件について)。

考える鉛筆


4757220537「一方、ソ連は鉛筆を使った」というジョークもあるくらい、心強い筆記具の筆頭である鉛筆。その「今」について、削り方、握り方、軸の断面形状、敷き台、書く対象(原稿用紙へのこだわりはもちろん、紙ナプキンやティッシュも)など、考えるための材料をたくさん詰め込んだ一冊、小日向京さんの『考える鉛筆』パーフェクトペンシル伯爵コレクションが、あとで必ず「ああ買ってよかった」と実感するものだ(p. 85)などと言われると、さて。

4794961421鉛筆の「歴史」ならヘンリー ペトロスキー『鉛筆と人間』(晶文社, 1993)でしょうか。

オールタイムベスト筆記具

第五世代筆記具


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第五世代というと顔をしかめられる業界もあるようですが、文房具業界はどうでしょう。

パーカーから“第五世代”と銘打った筆記具「インジェニュイティ」が発売されたので試してみました。手で書く機会はあまりないにもかかわらず、いつもいい筆記具を探しているので、「書き味」をアピールする筆記具の新製品はだいたい試しています。

インジェニュイティ (parkerpen.com)

まず、名前にちょっと問題があります。発音しにくく憶えにくい。限定販売の今のうちに、発音しやすい名前に変えておいた方がいいと思います。

パーカーが勝手に言っていることではありますが、「世代」というのはこんな感じだそうです。

  1. 万年筆
  2. 油性ボールペン
  3. ローラーボール(水性ボールペン)
  4. メカニカルペン(シャープペンシル)
  5. 一般名称不明(製品例:インジェニュイティ)

サインペンが入っていないのも問題です、限定販売の今のうちに、「インジェニュイティ」は“第六世代”ということにして、空いたところにサインペンを入れておいた方がいいと思います。

「1本だけ」と言われればジェットストリームだという人が多いと思いますが、ピュアモルトシリーズ以外は手触りがあまりよくありません。リフィルは同じM66でも、ティポよりもスイフトがいい、これも同じ理由からでしょう。この点に関しては、「インジェニュイティ」はとてもいいと思います。

指先の神経は脳と大変密接に関係していますので、ペンの手触りという面でも満足してもらうというのはとても大切なことだと考えています。(「LAMY」社長が語る、モノ造りの真髄

確かに「新しい」書き味を実現した第五の筆記具登場(All About)

オールタイムベスト筆記具(更新中)

キーボード配列QWERTYの謎


キーボード配列QWERTYの謎安岡 孝一, 安岡 素子
NTT出版 (2008/03)

日記でたびたびQERTY配列に関する俗説を批判されていたから、調べられていることを知っていた人は多いと思う。その集大成を、かなり期待して待っていた私。

QERTY配列に関するメジャーな俗説は次の2つ。

  • 人間がキーを打つ速さにタイプライタのメカが対応できなかったため、キー配列をわかりにくくして速く打てないようにした
  • TYPEWRITER社のセールスマンが、一番上の列だけを使って社名を素早く入力できるようになっている

私自身、第一の俗説を信じていて、それを披露していたこともあった(ごめんなさい)。披露して、第二の説で反論されたことも。

本書は、これらがガセネタだということを、歴史を丁寧に追うことで証明した力作。前著「文字符号の歴史」は価格が「うっ」という感じだったが、今回はリーズナブル。

俗説を日本で広めた人もちゃんと調査されている。広まる原因には有名人がいるわけで、

一九八七年一月、東京大学の坂村健が「アンチQWERTY説」を、(中略)という文章で流布した直後に、一橋大学の今井賢一や東京大学の石田晴久が「アンチQWERTY説」を引用し、あっという間に日本中が「アンチQWERTY説」で埋まっていった。(p.174)

なんか、各方面で敵を作りそうな・・・。ちなみに、俗説の日本での初出はおそらく1924年とのこと。日記でもいろんな例を紹介(攻撃)されている。

前著の時も感じたことだが、安岡夫妻の書籍を紹介するのはちょっと難しい。というのも、

学者がその論文や著書に、歴史に関する記述を含めるのなら、当然そこには歴史学者としての姿勢が求められるはずだ。歴史の事実を追求しようという姿勢だ。しかし、現実はそうではなく、孫引きや曾孫引きがエンエンと繰り返されてきた。(p.188)

と主張する安岡夫妻の著作を引用することが、まさにその批判の対象になるだけでなく、失礼なのではないかと思われるからだ。とはいえ、

これまで肥大化し続けてきた「アンチQWERTY説」に対して、私たち夫婦の投げるこの石は、あまりに小さい。願わくば本書の読者も、今後は「アンチQWERTY説」に向かって石を投げてくださることを、切に望む次第である。(p.189)

とあるから、石を投げてみよう。援護射撃になればいいのだが。

ウェブの世界でも、Googleに「QWERTY」と訊けば、いわゆる「アンチQWERTY説」が上位に出てくる。みんなの意見は案外正しくない。

QWERTY配列は、19世紀後半に英文のタイプライターが開発された当初のキー配列がそのまま継承されたものであり、この配列が採用された理由については、タイプライターのバーが互いに絡みにくいように設計されたものであるという推察が有力となっている。そうであるならば、キーは故意に打ちにくく設計されていると表現することもできるため、両手全指を用いてタッチタイピングを行うことの多い現在でもQWERTY配列が最良であるか否かについて、様々な意見が飛びかっている。(IT用語辞典バイナリ, ZENetの用語解説

タイプライターのバーが絡みにくいように設計されており、故意に打ちにくくしてあると揶揄される傾向があるが、実際には左右交互の打鍵になるように配慮して配置されている。(HitachiSystemsのパソコン用語辞典, e-Words

IT用語辞典では、いろんな同じ文章を使い回している例がよくあって、以前から気持ち悪いと思っていた。ここで挙げた例を見ると、気持ち悪いでは済まされないことになってしまうことがわかる。もし、内容が間違っていても、いろんなサイトで使い回されていると、その間違いがなかなか消えないのだ。

何故 Qwerty 配列になったのかというと、英文を平でタイプしたとき、連続して出てくる文字の統計をとって、アーム(印字を行うために紙にたたきつける棒)が交差しないように決められたものなのです。タイプライターは機械的な動作をする物なので、この Qwerty配列 はもっぱら構造的な制限から決められたものだったのです。(雪下智且「キーボードの歴史」

タイプライターのキー配列は,英字キーの最上段を左から読むと「QWERTY」となることから,QWERTY配列と呼ばれた。タイピング・スピードが高速になると印字ヘッドが交差してしまうという機械部分の問題から,あまりタイピング速度が上がらないQWERTY配列に収束していったと言われている。1880年代後半のことだ。つまりQWERTY配列は人間が機械に合わせるという妥協の結果生まれたものだ。(八幡勇一の「キーボード論」(ITpro)

若い人の中には、もはや英文タイプライターを見たことない人もいるかもしれませんが、キーを打つと、キーで蹴っ飛ばされたアームがハンマーのように動き、インクリボンと紙を打ち、文字が印字される仕組みです。このとき、近くにある二つのキーをほぼ同時に打つと、アーム同士が押し合ってからまり、調子良く打っていたのに中断され、からまりを解くのに苦労することがありました。そこでアームの衝突を防ぐために、連続して現れることの多い文字がなるべく遠くに配置したのが現在のQWERTY 配列だという説がありますが、真偽は不明です。(キーボード配列の歴史

「みんなの意見」は案外正しいというし、ウェブは「みんなの意見」だけを目立たせるシステムになりつつあるのだけれど、本書を読むと、そう単純でもないよなあ、と自戒せずにはいられない。

欲を言えば、もっと最近の事情まで扱って欲しかった。和田先生の論文「けん盤配列にも大いなる関心を」で扱っているあたりまで。「A」の左がControlなのかCaps Lockなのかが、私にとっては大問題なのだ。

追記:安岡さんにコメントで教えていただきました。以下の文献で少し現在に近づきそうです。