Mathematicaのサジェスチョンバーはオフにすべき(10.4)(10.4.1で修正)


10.4.1で直ったようです。

Mathematica 9で導入されたサジェスチョンバーのせいで計算結果がおかしくなることがあるようです。テクニカルサポートにバグを報告したら,その回答として教えてもらいました。

例1:以下のコードを1行ずつ実行するとMathematicaが落ちます。

m = SparseArray[{{0, 1, 0}, {1, 0, 1}, {0, 0, 0}}];

n = Map[With[{s = Total[#]}, If[s == 0, #, #/s]] &, Normal[m]];

n.n

例2:以下のコードを1行ずつ実行するとコンテキストが勝手に変わってしまいます。

Context[]

f = Solve[{2 x + y == p, x - 2 y == q}, {x, y}][[1]];

x + y ≤ 4 /. f

Context[]

せっかくフロントエンドとカーネルを分けているのにどうしてこんなことになるのか不思議ですが,文句を言っても計算結果は変わらないので,以下の資料に従って,サジェスチョンバーはオフにしておきましょう。

入力予測インターフェースの機能をオフにする方法

MathematicaのMaxValueとMinValueのバグ(11.2で解決)


11.2で解決

Mathematica 10.1, 10.2, 10.3, 10.4.1, 11.1.1

Mathematicaの最大化MaxValueと最小化MinValueには,簡約のためのSimplifyの中では使えないというバグがあります(製造元には報告済みです)。

例として,0 <= t <= 1, 0 <= p <= 2 Pi, 0 <= q <= 2 Piという制約のもとで,f = Abs[t Sin[p] Sin[q]]という関数の最大値と最小値を求めます。

f = Abs[t Sin[p] Sin[q]];
cond = And[0 <= t <= 1, 0 <= p <= 2 Pi, 0 <= q <= 2 Pi];

当たりを付けるために,まずは数値的に求めます。

{NMaxValue[{f, cond}, {t, p, q}], NMinValue[{f, cond}, {t, p, q}]}

結果が{1., 0.}になることに,特に問題はないでしょう。

解析的に求めようとすると,うまく行きません。(11.2ではうまく行きます。)

MaxValue[{f, cond}, {t, p, q}]
(*結果は割愛。入力がそのまま返される*)

こういう関数の最大・最小は,そのままではうまくいかないとしたものです。残念ですが,これはしょうがない。

しかし,Simplifyの中で使うと計算が進むことがあります。制約条件を仮定して結果を整理することを試みます。

Simplify[MaxValue[{f, cond}, {t, p, q}], cond]

得られる結果は「∞」,もちろん間違いです。MinValueの場合も同様で,「-∞」という間違った結果が得られます。

Simplifyの仮定(外側のcond)が,MaxValueの制約(内側のcond)を簡約しているのが一因だと思います。そういうことがあるのは,次の例でわかります。

Simplify[MaxValue[{1/x^2, 0 < x}, x, Integers], 0 < x]

結果はMaxValue[{x^(-2), True}, x, Integers]になります(11.2では正しい結果「1」が得られます)。制約がTrueになっていますが,これはいけません。

Tweet-a-Programではちょっと違うことが起きているみたいです(こういうのは初めて見ました)。

他に原因があるかどうかはよくわかりません。

MaximizeMinimaizeでは,この問題は発生しません。一般に,MaximizeMinimizeMaxValueMinValueより遅いということになっているのですが,速さよりは正確さが大事なので,こちらを使った方がいいのかもしれません。

MathematicaのSolveとReduceのバグ(10.2で修正)


10.2で修正されました。

Mathematica 10, 10.1のSolveとReduceには,ベクトルや行列が等しくないという条件を正しく扱えないという,かなり深刻なバグがあります。(製造元には報告済みです。)

例として,
x^2+y^2 == 1かつy == 1/Sqrt[2]
という方程式を
{x, y} != {-1/Sqrt[2], 1/Sqrt[2]}
という条件のもとで解きます。

Solve[And[
  x^2 + y^2 == 1,
  y == 1/Sqrt[2],
  {x, y} != {-1/Sqrt[2], 1/Sqrt[2]}],
 {x, y}]

Mathematica 9.0.1では
{x -> 1/Sqrt[2], y -> 1/Sqrt[2]}
という正しい解が得られます。

Mathematica 10.1では
解なし
という間違った結果になります。

いろいろ試してみると,Solveの中に書いた
{x, y} != {-1/Sqrt[2], 1/Sqrt[2]}
という条件が,
x != -1/Sqrt[2] || y != 1/Sqrt[2]
ではなく,
x != -1/Sqrt[2] && y != 1/Sqrt[2]
と解釈されているようです。

Reduceでも同じ問題が起こります。

Reduce[{x, y} != {0, 0}, {x, y}]

Mathematica 9.0では
x!=0 || y!=0
という正しい解が得られます。

Mathematica 10.1では
x!=0 && y!=0
という間違った解が得られます。

というわけで,Mathematica 10.1では,SolveやReduceの中に,ベクトルや行列が等しくないという条件は書けません。とりあえずの解決策は,Or[x != 0, y != 0]のように成分ごとに書くことですが,これでは2次元限定ですし,そもそもMathematicaで成分を書いたら負けな気がするので,「例えば,Mathematica 10.1を避ける」でも仕方ないでしょう。

製造元のウェブサイトには,「世界で最も信頼できる最新技術計算システム」とありますが,それはないと思います。