ミンスキー『計算機の数学的理論』


4000059416私が初めて計算機科学を学んだ『ファインマン計算機科学』では,ミンスキーの本に掲載されているチューリングマシンを使って計算の理論を解説していました。ファインマンは何でも自分で再発明してみるタイプだったそうなので(ファインマンさんの流儀),万能チューリングマシンも自分で構成したかもしれません。しかし,解説に使ったのはミンスキーのものでした。

われわれの議論は,ミンスキー[1967]の議論を念入りにたどっている。(p.56)

このミンスキー[1967]は Computation: Finite and Infinite Machines のことで,Amazonでは見つけにくいのですが『計算機の数学的理論』という翻訳があります。

4782800541ミンスキーと言えば『心の社会』が有名で,たとえば石田晴久先生は,『コンピュータの名著・古典100冊』新版あり)の中で次のように書かれています。

節の数は全部で262もある。(中略)この262節の中には修士論文や博士論文のタネがごろごろしているような感じがする。(p.81)

『計算機の数学的理論』にも,実は博士論文のタネが埋まっていて,私はかつて,それを拾って博士論文を書きました。(タネから芽が出たとは言いませんが。)

追悼:マーヴィン・ミンスキー。MIT人工知能研を設立したAI研究の先駆者

30th ANNIVERSARY ドラゴンボール 超史集


4087925056古印体ではじまるマンガ『ドラゴンボール』,公式発売日前にジャンプを売ってくれる店を探して行くほど好きでした(インターネットのない時代)。高校入試の試験当日,真冬の早朝に,発売前のジャンプを家に持ってきてくれた友人の優しさは忘れませんが,肝心の内容はほとんど忘れました。フリーザを倒した後は特に。『30th ANNIVERSARY ドラゴンボール 超史集』に掲載されている最終回を見ると,一応最後まで読んだことは思い出すのですが。

至高の靴職人


4093883912竹川 圭『至高の靴職人 関信義 手業とその継承に人生を捧げた男がいた』(小学館, 2014)

こんな話を知っているか。むかし,ヨーロッパのどっかの国でベントレーが盗まれた。もち主は泥棒に広告を打とうと思い立つ。酔狂なやつだな。が,やつが本領を発揮するのはこっからだ。その広告はなんと,クルマはくれてやるから,トランクに入っていたジョン・ロブの靴だけは返してくれって内容だったんだ。ロブっていや,紳士靴の一等賞っていわれるブランドだわな。それにしたって,ベントレー以上の価値をみとめさせたってのはちょっとすごい。

これが実際にあった話かどうかなんてのは問題じゃないんだ。

おれもそういう靴がつくりたい。客にぎゅっと両手で抱きしめてもらえたら最高だね。それにはいまもって努力が必要だ(p.180)

『プロの数学』・『大学数学への道』


4489022123大学入試の数学の問題には,高校の範囲を超えた数学の知識があって初めてその本質を理解できるものがある。そういう問題とその本質を紹介する2冊。松野陽一郎『プロの数学』(東京図書, 2015)米谷達也・斉藤浩『大学数学への道』(現代数学社, 2013)

4768704255『プロの数学』(プロの定義は不明)は,その大部分が線型代数と解析になっていて,大学の教養の数学にそのままつながりそう。『大学数学への道』はそういうことにこだわらず,興味深い話題をいろいろ紹介してくれる。

こういう企画は面白いし読んでいて勉強にもなる。しかし,こういう企画が成り立ってしまうことが,大学入試の欠陥を表しているとも思う。大学入試なのだから,高校で学ぶ範囲でその本質を理解できるものを出題するのが理想だと思うのだが,それでは入試が成り立たないということなのだろう。

この本で取り上げた大学入試問題は,すべて東京大学と京都大学の過去出題問題になりました。いろいろ考えた結果,こうなりました。(『プロの数学』p.v)

東大と京大の問題の質が一番よかったということだと初めは解釈したが,東大と京大の問題が特に理想から遠いおかげでネタにできたということもあるかもしれない。

問題に書かれていない本質を捉えるためには「出題者の意図」を探ることが必要で、『プロの数学』にはそういう表現が何度も出てくる。出題者の意図を探ることが、数学のトレーニングにおいてよいことなのかどうか考えさせられる。

緑の世界史


4022596031マンガ版の『風の谷のナウシカ』が完結したとき、インタビューの中で宮崎駿さんは次のように語っていました。

やっぱりナウシカの世界を突き詰めていくと、『緑の世界史』にいきつくね。その冒頭のイースター島のエピソードだけでもどうぞ読まれてみたらと思う。それを読むと、何も産業革命や、ハイテクを使うようになったからということ以前に、もう農耕をはじめたり、プロメテウスの火をもらった時から、どうもこの生き物というのは、業を背負っているなと。そういうことで。機械文明とか何とかということほどシンプルな問題ではないと思いますよ。(『コミック・ボックス』1995年1月号 p.11)

『緑の世界史』のイースター島のエピソードとは、石像を運ぶために人間が木を伐採しつづけた結果、森林が破壊され、文化が衰退したというものでした。

ナウシカの背後の文明観を支えるものとして、これは確かにわかりやすいエピソードでした。事実なら。

イースター島の文明は自然によって淘汰された:遺跡調査による裏づけ