あなたの本郷の物語


学会のために東大本郷キャンパスに行ったついでに総合図書館で調べ物をしていたら、外で応援団が大騒ぎをしているのが聞こえてきました。今日は合格発表の日だったようです。東大のチアリーディングを見たのは久しぶりです。

2年後に本郷に来るあなたが、キャンパス内に生協以外の商業施設があることにあまり驚かない、そのことに私はちょっと驚きます。10年くらい前に松本楼ができたときは、かなり驚いたものなのに。独立行政法人になってからは、何でもありという感じですね。商業施設の誘致では、私立大学が先を行くのが当然だと思っているかもしれませんが、1社にサービスを独占させて、「競争がないとダメだ」ということを学生が身をもって体験できるようにしている私立大学もあるのです。友人の大学に遊びに行って、世の中いろいろだということを知るのはこの頃です。

2年後に本郷に来るあなたは、本郷がカレー激戦区だということを知ります。

プティフでは、「東大生はマニュアル通りにやるのが得意」だなんてイヤミを言われたときのことを思い出すでしょう。「TVチャンピオンカレー選手権で優勝したお店」に行くなんていかにもマニュアル通りな感じですが、もっと根本的な原因は、基本をおろそかにしないその性格にあることをそろそろわかってくるはずです。

喫茶ルオーは深刻な会合が行われる可能性が最も高い店です。あなたも例外ではありませんが、カレーを楽しむくらいの余裕はあります。カレーの後のコーヒーを楽しむ余裕がないことの原因が、その後しばらくあなたを悩ませる原因でもあるわけですが、さらに時間が経つと、ルオーにまつわるネタとして、ブログに書けるようになるのです。

慣れてしまえば当たり前のことでも、誰かが教えてくれるということはまずないので、実体験を通じて学ばなければなりません。(例えばまだあまり親しくない相手と)ランチをゆっくり楽しみたい時にアルルカンには行かない。お昼時はとても込んでいるので、ゆっくりするのは無理なのです。一度失敗したあなたは、アルルカンには変な時間に行くようになります。

妙な名前に身構えて行くにも拘わらず、万定フルーツパーラーは、カレーの概念を揺さぶられる場所になります。学生の間はあってあたりまえの万定ですが、あのカレーの味、店の雰囲気は、あなたの学生生活の象徴の一つになるのです。

情報工学のあらゆる問題は別のレベルのインダイレクションで解決される


ウィキペディアに、

ランプソンの言葉として「情報工学のあらゆる問題は別のレベルのインダイレクションで解決される」というものがある(ランプソン自身は、デビッド・ホイーラーの言葉だとしている)。(バトラー・ランプソン

とあるように、この言葉、チューリング賞を受賞したバトラー・ランプソンではなく、デビッド・ホイーラーのもののようです。

ホイーラーの言葉として「計算機科学のいかなる問題も他のレベルのインダイレクションによって解決できる。ただし、それによって新たな問題が発生することが多い」という言葉がしばしば引用される。(デビッド・ホイーラー

後半を引用するかどうかに大きな違いがあるのかもしれません。私もC++本で使わせてもらいました。

『Microsoft Visual Web Developer 2008 Express Edition入門』の誤り


拙著『Microsoft Visual Web Developer 2008 Express Edition入門』の中に間違いがありました。申し訳ありません。

P. 5

誤:画面解像度をVGX(1024×768ドット)に設定した状態
正:画面解像度をXGA(1024×768ドット)に設定した状態

P. 58

誤:Session("image") = FileUpload1.FileName
正:Session("photo") = FileUpload1.FileName

P. 96

誤:テーブルの前データを取り出せるように
正:テーブルの全データを取り出せるように

P. 106

誤:SqlDataSource.delete()
正:SqlDataSource1.delete()

P. 172

誤:ラジオボタンがオフであることを確認する
正:ラジオボタンがオンであることを確認する

P. 201

誤:[BodyLabel]のスマートタグアイコンを
正:[Panel2]のスマートタグアイコンを

よいコーヒーのための三つの条件


おいしいコーヒーを飲むために必要な、たった一つの大切なことという記事が話題になっていました。要点は、

コーヒー豆(粉)は冷蔵庫(冷凍庫)で保管しましょう

とのこと。ちょっと気になったのは、

酸化したコーヒー豆で淹れたコーヒーは、はっきり言ってまずいです。泥を飲んでいるようです。

このコーヒーを飲んで、「ああ、コーヒーってまずいよな」とか、「ブラックコーヒーはこんなもの」とか、「やっぱりミルクと砂糖がないとダメだよ」とか言われると、僕は悲しい。

かくして、「コーヒーはうまいものではない」というダメ都市伝説が世の中を席巻します。

というところ。お店で挽いてもらったとしても最初はおいしいはずなので、「コーヒーはうまいものではない」ということにはならないと思います。ちょっとずつ(例えば1日1杯とか)飲んでいると、味も香りもだんだん悪くなっていくことがわかるはずです

思うに、コーヒーを飲む人の大部分にとって、味も香りも関係ないのではないでしょうか。ようは、カフェインを摂取できればいいとか、コーヒーを飲むというライフスタイルが好きとか

日本でのコーヒーの売れゆきは、中身よりもストーリー性やうんちくのあるなしで決まってしまうんです(p.254)

コーヒーに憑かれた男たちあるいは、酸化したものをおいしいと思うようになっているのではないでしょうか。こんな話もあります。ちょうど文庫化された嶋中労『コーヒーに憑かれた男たち』から(引用はハードカバー版から)

某喫茶学校で複数の被験者に三種類のコーヒーを飲ませた。古くなって発酵したコーヒー、焙煎したての新鮮なコーヒー、そしてインスタントコーヒーの三つである。で、うまいとおもった順に並べてみろとやったら、①古くなって発酵したコーヒー、②インスタントコーヒー、③焙煎したての新鮮なコーヒーの順に示し合わせてように並べたものだから、主催者側はあわてた。日頃から鮮度の劣化したコーヒーばかり飲んでいた被験者たちの味覚は、だんだん「わるいコーヒー」の味に馴致され、発酵臭までもうまいと感じるようになってしまったのである。(p.52)

人間の嗜好の柔軟性には感心してしまいます

そもそも、2007年の九州・沖縄サミットの晩餐会のコーヒーを担当した南千住「カフェ・バッハ」店主、田口護氏によれば、

「うまい・まずい」というのは個人の嗜好の問題で、そこには客観的な評価が介在しにくく、議論の土俵にはなり得ない(p.52)

では、「よいコーヒー」の条件は? 田口氏によれば、それは次のようなものだそうです(p.55)

  1. 「欠陥豆」がハンドピックによって取り除かれているもの
  2. 煎りムラや芯残りのない「適正な焙煎」がほどこされたもの
  3. 焙煎したての「新鮮」なもの

最近ではあたりまえですよね

この本では、ここで紹介した田口氏の他に、銀座「カフェ・ド・ランブル」の関口 一郎氏、吉祥寺「もか」の標 交紀氏を御三家とし、彼らを軸にコーヒー文化を語っています

オールドコーヒーといえばランブルの関口、関口といえばオールドコーヒー—「虎屋の羊羹」を知らぬものがないように、自家焙煎を志す者にとっては、関口のオールドはすでに歴史的な事実であり、味わっておくべき必須のコーヒーといっていい。(p.37)

標の放つ批判の矢はパリの国立図書館にも向けられる。館内の書庫には世界最古のコーヒーに関する文献があるというのだが・・・。

《・・・ついでに、コーヒー部門の資料を見てみたが、これは貧弱きわまるコレクションで、我が家の書家にあるものの方が、質・量共に、はるかに充実した内容だった》(p.223)

煎ったコーヒーの賞味期限も10日くらいです

私たちはこの三〇年、ひたすらまずいコーヒーを飲まされてきたことになる。しかしそのまずいコーヒーが生まれた背景には、貧しい生産国の止むにやまれぬ事情があった。だれが言ったか、「コーヒーは貧困と流血の産物」なのだという

田口氏のコーヒーを飲んだブラジルのコーヒー農民たちが、「おれたちが育てたコーヒーはこんな味がするのか・・・」と驚いたというエピソードも紹介されている(p.229)

「コーヒーの”苦味”はただの苦味ではない(p.191)」

・・・

技術を惜しげもなく披露することに関して訊かれた「カフェ・バッハ」の田口氏はこう答えたそうです

いや、ぜんぜんかまわなない。うちにはそういった企業秘密みたいなものはないから。あれは技術の七割八割を共有しようってものだから、まったくかまわないの。実際はその上にいくつかの段階があって、それは言葉や数字の裏に隠れてる。努力次第でそれが徐々に明かされる、という感じかな。もちろんその隠された部分も精確に言葉で表現しきってみたい、という欲求はあったんだけどね(p.156)

コーヒーが好きでかつバッハが好きな人は、『田口護の珈琲大全』『珈琲の楽しみ方BOOK』には、たまらない魅力を感じるのでは?

田口護の珈琲大全 珈琲の楽しみ方BOOK―豆の選び方・挽き方、ブレンドの仕方がわかる (カンガルー文庫)

関連:コーヒー危機

ちなみに、『憑かれた女たち』というのはAmazonにはこれしかありませんが、「憑かれた男たち」というのはたくさんありますね。男はつかれやすい?

ポリゴンを描く(Mathematica)


ポリゴンを表示するプログラム(どう書く?org)

適当なポリゴンを表示させて、描画するプログラムを書いてください。ポリゴンは回転させてください。

2D処理だけなら、標準ライブラリで大体いけますが、3D処理は追加でライブラリを利用すると思うので、何のライブラリを利用したのか書いてください。

正四面体を書いてみる

まず、頂点を設定

a = {1, 0, 0};
b = {-1/2, Sqrt@3/2, 0};
c = {-1/2, -Sqrt@3/2, 0};
d = {0, 0, Sqrt@2};

次に、ポリゴンを生成

tetra = {
   Polygon[{a, b, c}],
   Polygon[{a, b, d}],
   Polygon[{b, c, d}],
   Polygon[{c, a, d}]
  };

最後に、描画

Show[Graphics3D[tetra]]

Mathematica 6ならマウスでドラッグすれば回転する(Shiftを押しながらドラッグすると拡大縮小。参考:グラフィックスのインタラクティビティと描画

Mathematica 5.2以前なら、「RealTime3D」を読み込んでから描画すれば、ドラッグすれば回転する(このことはドキュメントに書かれていない。Version 6の新機能だから?)

ご存知ですか?

RealTime3Dは3Dグラフィックスをリアルタイムに回転させるもので,Mathematica 4.1ではすべてのプラットフォームでサポートされています.<<RealTime3D`というパッケージをロードすればマウスで3Dグラフィックスの操作ができるようになります.(MATHwire 2001年1月

<< RealTime3D`;
Show[Graphics3D[tetra]];
<< Default3D`;

上の方法で正四面体を描いたのはポリゴンの描き方を見せるためであって、普段は単にライブラリを呼び出すだけでいい

<< Graphics`Polyhedra`
Show[Polyhedron[Tetrahedron]]

論文の生産コスト


東大の論文、1本1845万円 国立大でコスト最大級(朝日)

文部科学省科学技術政策研究所の調査結果。調査自体はともかく、この報道の仕方は、なんだかなあ

研究費100万使って1編論文書く人がいたら、1億使う人は100編書かなきゃいけないわけ? そういうことにならない限りは、研究費をたくさん使う大学がワーストになるんだよ

研究費の配分問題に詳しい竹内淳・早稲田大教授は「少ない費用で優れた成果を出している地方の国立大にも研究費を正当に配分するような制度に変える必要がある」と話している

それはそのとおり。でも、この意見の正当化のために今回の調査結果を使うことはできないはず。というか、この報道のような「こじつけ」に利用されると、主張自体を貶める危険もでてくる(心配しすぎか)

「単価」で比べると高いものは悪いに決まってるように見えるけど、それは統計の罠というものだよ

昭和を騒がせた漢字たち


昭和を騒がせた漢字たち―当用漢字の事件簿 (歴史文化ライブラリー 241)副題:当用漢字の事件簿 (歴史文化ライブラリー 241) (単行本)
円満字 二郎 (著)
吉川弘文館 (2007/09)

なぜ漢字にこだわる人が多いのか。本書から読み取れる理由は以下のとおり

  1. 社会のあり方との関係
    1. 難しい漢字を使いすぎると、教育を受けていない人とコミュニケーションができなくなる。体制は戦前、この問題を悪用して、わざと「八紘一宇」のようなわかりにくいスローガンを使っていた
    2. 漢字を制限することは自由への抑圧になる
  2. 個人の感情の問題
    1. ある形とともにそのことばを経験したことによって、形とことばとが切り離し不可能なほどに結び付き、その言葉を他の形で表現することに違和感を覚えるようになる(p.48)
    2. 多くの人に「基準を求める心」がある

題名通り、多くのお騒がせな事例が紹介されているが、それらの多くは上にまとめた観点から解釈できるようになっている。たとえば、朝日新聞が独自の略字体(朝日文字)を使っていたのは1.1を、題字が変なのは1.2を意識してのことなのかなあ、とか

参考:新聞の題字にみる「教育的配慮」

同著者の『人名用漢字の戦後史』もおすすめ

グールド、ボックスセット(80枚!)


キタ、ミタ、カッタ
Complete Original Jacket Collection [Box Set] [Limited Edition] [United Kingdom]

収録作品のリスト

高校生の頃からちょっとずつ買い揃えてきた苦労はいったい。20枚セットのバッハ全集がほぼ同じ価格って・・・。

最近発売されたラジオ番組集なんかは入ってないね。バーンスタインの有名な釈明が入っているやつなんかも。

2枚入っているのもあって、ジャケットは8 x 9 – 1 = 71枚(右下は解説)

失われた時を求めて


失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

小説 恋愛をめぐる24の省察10年ほど前、今よりさらにものを知らなかった(当然プルーストも読んでいない)私は、どういうわけか、翻訳されたばかりの小説『小説 恋愛をめぐる24の省察』を手に取り、非常に感銘を受けたのだ。プルーストをパクって言えば、

最初に私のなかに現れる最も密かなものは、たえず動いて他のすべてを操るハンドルのようなものだ。それは今読んでいる本の哲学的な豊かさと美しさへの信頼であり、どんな本であろうと、その哲学性と美を自分のものにしたいという欲望だった。(中略)幸福と不幸、その最も激烈なものは人生ではゆっくり生まれるので、それに気づくことができず、読書がなければ永遠に知りえなかっただろう。(コミック p.37)

プルーストによる人生改善法人生における読書の価値にはまだあまり確信を持っていなかったが、それでも著者のアラン・ド ボトンは読書がなければ永遠に知りえないことを教えてくれるかもしれない作家として私の記憶に残ることになり、当然の成り行きで、次に翻訳された『プルーストによる人生改善法』も出版されてすぐに読んだ。これが私とプルーストの出会いだ。なんと遅れてきた出会いか

そもそもなぜ私は『小説 恋愛をめぐる24の省察』を手に取ったのか、これがどうしても思い出せない。この思い出せない感じをプルーストをパクって表現すれば、

私たちの過去を思い出そうとするのは無駄な努力だ。知性の努力はすべて空しい。過去は知性のとどく領域の外にあって、思いもかけないものに隠れている。死ぬまでにこのものと出会えるか出会えないかは、偶然に任されている。(コミック p.17)

私は私のマドレーヌに出会えるのだろうか

さて、その圧倒的な表現力を見せ付けられて自分の表現力のなさにがっかりする危険はあるのだが、それこそ読書がなければ永遠に知りえないだろうことへの好奇心を抑えることは不可能で、読まずに済ますわけにはいかないプルースト。だが、あのあまりの文量を考えると、ちくま文庫の第1巻だけがたくさん売れるのも、まあ仕方がないことかもしれない(私も、この人生でプルーストを原書で読むのはたぶん無理)

まことに残念ですが...―不朽の名作への「不採用通知」160選プルーストがとっつきにくいのは、一般読者に限ったことではない。『まことに残念ですが』には、次のような有名な不採用通知が掲載されている

ねえ、きみ、わしは首から上が死んじまってるのかもしれんが、いくなない知恵をしぼってみても、ある男が眠りにつく前にいかにして寝返りを打ったかを描くのに、なぜ三〇ページも必要なのか、さっぱりわからんよ。(p.146)

『プルーストによる人生改善法』でも「プルースト読んだ女とは結婚してもいいぜ」でもなんでもいい。「なぜプルーストを読まなきゃいけないのかを私に教えてほしい」という人に最適の一冊、『失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー』。帯に「古典の冒涜か? 名作の新解釈か? 新しい読書体験への招待か?」とあるが、もちろん「招待」ですよ。これを読んだら本物にあたらずにはいられなくなるはず

それでもまだ踏み切れない向きには、新訳の訳者による『抄訳版』解説「プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界」

抄訳版 失われた時を求めて〈1〉抄訳版 失われた時を求めて〈2〉抄訳版 失われた時を求めて〈3〉