「大学への数学」2017年6月号掲載の拙稿「機械まかせの数学 Mathematicaで解く東大入試数学」について


B06XWF34YQ月刊誌「大学への数学」2017年6月号で,「機械まかせの数学」という記事を書きました。内容は副題「Mathematicaで解く東大入試数学」のとおりです。

高校生向けの雑誌ですが,大学生,というか,「コンピュータと数学」ということに興味を持てるすべての人が想定読者です。高校数学の知識を前提にしていますが,大学入試問題を解く数学力は不要です。「Mathematicaでしょ,知ってる」という方も,Ver. 10以降のMathematicaを知らないなら,ちょっと驚くかもしれません。

膨大なネタを4ページに収めました。行間をすべて説明するのは大変なので,ここでは一つだけ。

「プログラミング入門=アプリ制作」や「プログラミング入門=ロボット制御」という風潮がありますが,この記事のように,数学を題材にしてプログラミングを学ぶという話は,もっとあっていいと思います。その際,題材とする数学は,高校レベルがいいでしょう。多くの方が基本的知識を持っていますし,問題の難しさも比較的判断しやすいからです(受験勉強のおかげ?)。大学入試問題を使うと,解けても解けなくてもそれなりの驚きがあります。

というわけで,高校生がメインターゲットの雑誌ですが,この記事は高校生以外にもお勧めです。

高3の一年間,この雑誌の学力コンテストで名前を載せ続けたのですが,著者として名前が載ることになるとは思いませんでした。いわゆる,「当時の自分に読ませたい記事」のつもりです。息子に読ませたいかというとちょっと微妙で,ちょうど1歳になる息子が読めるようになる2020年頃には,状況がまったく変わっているかもしれません。

記事中のコードはWolfram Cloudにまとめてあります。Mathematicaは高価なソフトウェアだと思っている人が多いようですが,基本機能はクラウド上で無料で使えます(こちら)。「別の言語でやってみた」という反応も歓迎です。

電子版はないので,お早めにどうぞ。

見本

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『アナイス・ニンの日記』新訳


『アナイス・ニンの日記』(水声社, 2017),重要文献の邦訳(一部新訳)である。

アナイス・ニンの日記には,初期(4巻)と編集版(7巻),無削除版(6巻)があり,一部はすでに翻訳されている。今回翻訳されたのは,下の網掛け部分の抜粋。

初期(4巻)

  • 1914–1920: Linotte (Vol. 1) 『リノット』
  • 1920–1923: Vol. 2
  • 1923–1927: Vol. 3
  • 1927–1931: Vol. 4

編集版(7巻)

無削除版(6巻)

今回の翻訳は当初,次のような計画だったらしい。

当初は,編集版・初期・無削除版の三シリーズを網羅する抄訳を,杉崎和子さんとわたしの共訳で出版する予定だった。(編訳者より)

計画どおりに上記の全17巻すべてを網羅していれば「決定版」となっただろう。無削除版がまったく入っていないのが特につらい。フィリップ・カウフマンの映画から来る読者のための最初の1冊が『ヘンリー&ジューン』であることは変わらずか。

本を書きました。『基礎からしっかり学ぶC++の教科書』


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『基礎からしっかり学ぶC++の教科書』(日経BP, 2017)

プログラミング言語なんて,Python一択になるんじゃないの?という向きは,TensorFlowのコードや,世界コンピュータ将棋選手権の参加チームの使用言語をご覧になるといいでしょう。「どうしてJavaやC++よりも遅いPythonが機械学習で使われているの?」などという話もあります。

『文法からはじめるプログラミング言語 MS Visual C++入門(マイクロソフト公式解説書)』(日経BP, 2009)の改訂版という位置付けですが,かなりの部分を書き直しました。

新しい話

  • C++11, C++14に対応しました。新しい話題は,型推論・ラムダ・ムーブ・新しい標準ライブラリ(ハッシュテーブル・並列処理・乱数・時間)などです。
  • Visual C++に加えて,GNU C++とClangでも,サンプルコードの動作を確認しています。
  • (実用的かどうかはともかく)C++の高速性が活きる例として,組み合わせパズルを解きます。(何を勘違いしたか,初刷では幅優先探索の英語が間違ってますな!)

なくしたもの

  • GUI(GUIアプリを作るならC++でなくてもいいだろうと考えてのことです。)
  • C++/CLI(旧版で,マネージ拡張という失敗例を紹介したわけですが・・・)

C++入門書の執筆は,プログラミング初心者からは「難しい」,C++のプロからは「いいかげん」と言われる,負けの決まった戦いです。(いいわけ)

松村真宏『仕掛学』(東洋経済新報社, 2016)


そういうわけで、松村真宏さんの『仕掛学』(東洋経済新報社, 2016)(参考文献リストあり・索引なし)を拝読したわけだが、特に興味深かったのは、第4章:仕掛けの失敗学(成功する仕掛けと失敗する仕掛け)、第5章:何かを「学」にするための仕掛け、第6章:この本が売れる理由(本を売るための仕掛け)、第7章:この本についてウェブで書かせるための仕掛け、第8章:娘たちへの思い、であった。もちろんこの記事は第7章の影響下にある。言われてみれば、量子論が量子力「学」になった経緯も詳しくは知らず。

東大駒場寮物語


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「今の学生は、学生を組織できないことがよくわかったよ」(p.191)

これは「存続運動がこれだけ盛り上がっているのを見て、どうですか?」という質問への、蓮實重彦教養学部長(当時)の回答である。駒場寮の存続を考える加藤登紀子コンサート(ときコン)の後の晩餐会でのやりとりだという。

松本博文『東大駒場寮物語』(角川書店, 2015)はセンチメンタリズムの本なのだが、考えさせる話がいろいろ盛り込まれている。

東大生(特に文I)には、(著者の表現ではないが)壁と卵で言えば壁の側に立つものが多い、とか。

古い友人が卵の側に立っていた(というか卵だった)ことを思い出したり。