どのハードディスクが危険なのか

追記:What Hard Drive Should I Buy?

Googleを支える技術 ~巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ) (単行本(ソフトカバー))コンピュータのパーツで故障しやすいものの代表格はハードディスクとファンだろう。特にハードディスクはファンに比べて壊れたときに失うものが多いため、なるべく壊れにくいものがほしい(もっとも、ファンが壊れて火事になるほうが、失うものは多いかもしれないが)。

買ってきたPCに搭載されているハードディスクを使っている限りにおいて、そういうことを気にする人はほとんどいないだろう。しかし、ハードディスクを追加するような場合には、故障率が低いと言われているメーカのものを使いたいという人は多いはずだ。

残念なことに、メーカごとの故障率のデータが、衆目を集めるということはあまりない。たとえそういうデータを持っていたとしても、その影響力に尻込みして発表を控えるということは理解できる。たとえば、膨大な数のハードディスクを利用しているGoogleは当然、メーカごとの故障率のデータを持っているはずだが、それは慎重に隠されている。Googleが発表しているのは、次のようなことだけだ(詳細は、論文:Failure Trends in a Large Disk Drive Populationや、この論文についての解説を収録した西田圭介『Googleを支える技術』(技術評論社, 2008)を参照)。

  • 長く使うと壊れやすくなるわけではない
  • よく使うと壊れやすくなるとも限らない
  • 温度が高いほど壊れやすいということもない
  • いくつかのSMART値は故障率に大きく影響する
  • 故障率に影響しないSMART値も多い
  • SMART値だけではいつ故障するかはわからない

これらの事実が有用であることは認めるが、メーカごとの故障率に比べれば、当たり障りのないことだとも言える。

だから、「データ復旧業者がHDD復旧統計データの2009年版を公開」などと言われると、「本当にそんなデータを出してしまっていいの?」と思ってしまうわけだ。注目した人も多いだろう。

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どのハードディスクが危険なのか、データ復旧業者がHDD復旧統計データの2009年版を公開 (GIGAZINE) ×
どのハードディスクが危険なのか、データ復旧業者がHDD復旧統計データの2009年版を公開(livedoor ニュース) ×
2008年製はハズレ? HDDのデータ復旧、依頼が多いメーカーは(Biz.ID) ×
日本データテクノロジー、2009年に復旧依頼をうけたHDD約4万台の統計調査(マイコミ) × ×
日本データテクノロジー、データ復旧対象のHDDメーカー比率を公開 (PC Watch) × ×

この話についての結論:よくわからなかった

期待して読んでみたが、メーカごとの故障率が発表されたわけではないことがわかった。そういう意味で、Biz.IDのタイトルは若干不誠実だと思う。どの記事も、プレスリリースをそのまま記事にしただけの感じ。そもそも何を意図した発表だったのかがわかるような書き方にはなっていなかった。(PC系のニュースサイトなら、メーカごとのシェアのデータと合わせるくらいの工夫はしてもいいのに。)

マスメディアの新人教育では「裏を取る」ことの重要性が強調されるらしいが、個々のネットメディアにそれを求めるつもりは私にはない。ネットには、いろんな意見を集約する機能があり、それによって、はじめは不完全だった情報が、少しずつ豊かなものになっていくことが期待できるからだ。そういう意味で、コメントもトラックバックも受け付けていないネットメディアは、もう少し工夫して欲しい。

2 thoughts on “どのハードディスクが危険なのか

  1. はじめまして。
    調べ物をしていてこのサイトに行き当たりました。
    ご存知かもしれませんが、日本データテクノロジーの悪徳業者ぶりは
    HDD修理業界内では非常に有名なことでして、
    この数字を出すこと自体が、広告宣伝活動かと思われます。
    GIGAZINさんは以前にも「広告」と隅に書いた
    データテクノロジーの記事を掲載したグルです。

    • うしですさん

      もともと、信憑性に疑問を呈するための記事だったわけですが、
      リンクにrel=”nofollow”を付けることにしました。
      ご指摘、ありがとうございます。

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