「人物評価」を重視する入学試験

政府の教育再生実行会議が、国公立大入試の2次試験から「1点刻みで採点する教科型ペーパー試験」を原則廃止する方向で検討するという。(毎日jp

日本のペーパー試験の大学入試はかなり厳密に行われていて、その結果は、社会からもかなり信用されている。だから、ペーパー試験の大学入試における不正行為に、社会はヒステリックに反応する。大学入試の結果への盲目的な信頼と、入試を通過しさえすればその後は比較的簡単だというよく知られた事実が両立しないからである。(例:大学入試問題ネット投稿事件

もし東大が、これまで行ってきたようなペーパー試験の2次試験を廃止して、面接だけで合否を決めるようなことになれば、大学入試への社会の信頼は揺らぐだろう。

これは悪いことではない。

大学入試の信頼度が下がれば、大卒を採用する企業は、大学名だけを見て志望者を選別することができなくなる。企業が学生のコミュニケーション能力以外の能力を真剣に測るようになれば、現状のようなよくわからない要求ではなく、「そちらの学生は具体的に何ができるの?」という現実的な要求が突きつけられるようになり、結果として、大学教育の質が向上するはずだ。悪くない。

というわけで、あまり評判の良くないペーパー試験廃止の方針にも、期待する要素はある。

ところで、東大入試が面接になったら、プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」はどうなるのだろう。「チューリングテストにパスすること」との差別化はできるのだろうか。東大入試が変わる前にプロジェクトが成功して、そのせいで入試が変わらざるをえなくなる、というのが研究者の理想かもしれない。人工知能の研究で、日本社会が大きく変わるのだから。