カラキョウを勧めるということ

東大教師が新入生にすすめる本東大教師が新入生に本を勧める、もともとは東京大学出版会のPR誌「UP」が毎年春にやっていた企画だったと思う。学生だったときはけっこう楽しんでいたはず。『東大教師が新入生にすすめる本』『教養のためのブックガイド』にまとめられているから、見たことのある人も多いのでは。今見ると「研究は立派だけど教養はなさそうだねえ」という方もいるね。

最近では、ブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」が毎年集計してくれていて便利(2007年版

今年、何が1位になっているかというと、カラマーゾフの兄弟(カラキョウ)だそうで。

東大出版のアンケート項目が、(1)私の読書から—印象に残っている本、(2)これだけは読んでおこう—研究者の立場から、(3)私がすすめる東京大学出版会の本、(4)私の著書、だから、(1)で点数を稼いでいるんだろうけど、こういうアンケートである以上、(1)にだって、人に勧めたいという意図はあるはず。

教養のためのブックガイドで、カラキョウですか。

カラキョウがいい小説だということに異論はないですよ。私の基準でもベストかも。でも、東大生って、ほっといてもカラキョウくらい読むんじゃないの? 読まないまでも、カラキョウがいい小説だってことくらい知ってるんじゃないの? わざわざ紹介する必要あるの?

ちょっとひねってヴォネガットとかどう?

人生について知るべきことは、すべてフョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中にある、と彼はいうのだった。そしてこうつけ加えた、「だけどもう、それだけじゃ足りないんだ」(ヴォネガット『スローターハウス5』p.122

これ読んだ人はきっとカラキョウも読むよ。

21世紀ドストエフスキーがやってくる

ドストエフスキー入門にお勧めなのが大江健三郎ほか『21世紀ドストエフスキーがやってくる』。「カラキョウ」は本書に収録されている斎藤美奈子「『カラキョウ』超局所的読み比べ」からパクった。大江さんの対談中の発言にしびれた。

ドミトリイは最終的に有罪になるんでしたっけ。

沼野充義さんの言う、『大江さんは「方法論的読み」といったらいいのでしょうか』に納得。

大江さんはかつて埴谷雄高『ドストエフスキイ全論集 』に付属するエッセイの中で、ドストエフスキーについて書かれたものでは、埴谷雄高のドストエフスキーについてのすべての仕事と、バフチン(エッセイでは新谷啓三郎訳だが、今入手しやすいのは『ドストエフスキーの詩学』)をすすめていたけれど、本書もおすすめになるんでしょうねえ。

私の場合

私の読書から—印象に残っている本
皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則 (単行本)『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』 人工知能批判として読むのではなく、大学程度の情報科学や理論物理の基礎を学ぶために読む本として秀逸。
これだけは読んでおこう—研究者の立場から
改訂新版 コンピュータの名著・古典100冊 (単行本(ソフトカバー))『改訂新版 コンピュータの名著・古典100冊』 これを紹介するのは「反則」なのかもしれないけれど、情報科学や情報工学と言われる分野はとても広くて、大学の4年間でその全体像を把握するというのはなかなか難しいと思う。把握した気分になるための本としてお勧め。ここで紹介されている本のタイトルくらいはふつう知ってるでしょう。
私がすすめる東京大学出版会の本
The Universe of English (単行本)『The Universe of English』 かつて東大の新入生が読んでいた英語の教科書。この本を読むと、東大教師が東大生にどの程度の英語力を仮定しているかがわかる。いわゆる「新しい教科書を開くときめき」を思い出すのにも使えるかもしれない。
私の著書
初級プログラマのためのWebアプリケーション構築入門 - 実践で学ぶJava,XHTML,SQL (単行本(ソフトカバー))『初級プログラマのためのWebアプリケーション構築入門』 ウェブアプリを作るために必要な知識をコンパクトにまとめた1冊。同様のコンセプトで書かれた書籍と比べて、データベース・プログラミングや文字コードについて詳しく解説した。「車輪の再発明」ではなく、「巨人の肩に乗る方法」を示すという方針を貫いた。2011年に改訂