ライフゲイムの宇宙


ライフゲイムの宇宙ウィリアム・パウンドストーン著, 有澤誠訳『ライフゲイムの宇宙』(日本評論社, 新装版, 2003)

The Recursive Universe: Cosmic Complexity and the Limits of Scientific Knowledge by William Poundstone

ながらく絶版だったが最近復刊した。入門的な説明から始まり、万能チューリング・マシンが原理的には可能であることまできちんと書かれていて、ライフゲイムについての最高の文献と言えるだろう。

しかし実はライフゲイムはこの本(原題『再帰的な宇宙:宇宙の複雑性と科学知識の限界』)で扱う世界像の一例でしかない。情報・(不完全な解決だが)マクスウェルのデモンから始まる宇宙の還元論的な理解がこの本の主題である。

しかし、その記述に成功しているかというと考えてしまう。特に「情報理論的な生命の定義」のあたりで。その第一要素は「生命をもつ系は自分自身の完全な記述を自分の中に埋め込んでいること」となっている。”完全”などということがあるのだろうか。情報にはそれを支える基盤が必要だとすると(情報を定義するためには物理法則が必要という仮定。この場合、物理法則の情報などというものはない)、生物の記述に物理法則は含めなくてもよくなる(他にも生存に不可欠な環境−しかもこれは生物が作っているからややこしい−も含めない)。しかしもし物理法則から生物が演繹できるとしたら、生物の情報量はゼロなのか? こんなことを考えさせてくれる良書である。

ところで、ライフゲイムで万能チューリング・マシンを作るために必要なセルは10^13程度と見積もられている。これはクラスタ計算機なら到達できるところだろう。視覚化の問題はあるが、誰かやらないだろうか。

追記:ワンライナー・ライフゲーム

ライフゲームの世界:ライフゲームのすばらしい成果が動画でまとめられています。「ライフゲームでライフゲームをシミュレートできること」が「ライフゲームのパターンがチューリングマシンと同等の機能を持つこと」の証明にはならないと思いますが。