改正JISへの対応(ベンダー別)


Vistaの発売によって顕在化したフォントの問題。メジャーどころの対応をまとめておこう。

以下、(旧)は1990年のJISの例示字体(例えば辻の点は一つ)に対応したもの、(新)は2004年のJISの例示字体(例えば辻の点は二つ)ということにする。(表外漢字字体表の印刷標準字体と言いたいところだが、そういう細かいことはここでは言わない。)

Microsoft

Microsoftからの説明

Vistaは(新)(MS明朝とMSゴシックはver. 5)。(旧)を使いたい人のために、MS明朝とMSゴシックver. 2.5が用意されているが、フォント名が同じため、使い分けることはできない。(ここで紹介されているttftoolsを使って、ver. 2.3や2.5のフォントの名前を変えれば可能だが、電子的なコミュニケーションには使えない。)

XPは(旧)(MS明朝とMSゴシックはver. 2.3)。Windows Updateでver. 5にできる(メイリオは含まれていない)。

つまり、MS明朝とMSゴシックは3つのバージョン(2.3, 2.5, 5)が混在することになる。

Ver. 2.5とver. 5を別のフォント名(MS明朝50とか)にして、Windows Updateで強制的にインストールしてしまえば、環境によって表示される字形が変わってしまうということにはならなかったはず。そうしなかった理由を想像するに、Microsoftの顧客層が後で述べる他のベンダーに比べて圧倒的に広く、その大部分は、MS明朝・MS明朝25・MS明朝50という3つのフォントを使い分けるなんてことはできない人たちだという判断があったのだろう。そうだとすれば、その判断は正しい。あるいは、「字形なんて気にするなよ」というMicrosoftからのメッセージかもしれない。そうだとすれば、その判断も正しい。つまり、Microsoftの判断は正しい(あくまで字体変更に関してだが)。(しかし、本当に字体がどうでもいいなら、バックスラッシュの字体を直してほしい。)

ジャストシステム

最新の一太郎のことは知らないが、私が持っている一太郎2006の場合、パッケージに付属しているのは「JS平成明朝体W3」で、これは(旧)。ユーザ登録すると(新)に対応した「JS平成明朝体W3[JISX0213:2004]」をダウンロードできる。

フォント名を変えているため、電子的なコミュニケーションにおいて問題が発生することはない。ただし、文書を書く際には、ユーザはフォントを選ばなければならない。開く際に気にする必要はない。文書が書かれた際に使用されたフォントで開かれるのだから(フォントがあればだけれども)。

フォント名を変えることがMicrosoftにできなくてジャストシステムにできたのは、ジャストシステムのユーザは、字体を考えてフォントを選ぶという、Microsoftが相手にしなければならない層にはできないことをできるからだろう。ユーザが賢いなら、ベンダーは理想に近い行動をとれる(JISの「例示字体は平成明朝体で示す」というような表現についてはどう責任をとってくれるのだろう、という疑問は残るが)。

AppleとAdobe

Appleの標準フォントであるヒラギノ明朝とAdobeの標準書体である小塚明朝は、JIS漢字よりも広い範囲をカバーするAdobe-Japan1.5に以前から対応している。標準で出てくる字体は(旧)のものだが、字体の切り替えに対応したアプリケーション(Mac OS Xに付属するソフトの一部やAdobe InDesignやIllustratorの比較的新しいもの)なら、(新)の字体を使うことができる。(それにしても、Adobeの説明はわかりにくい。)

対応していると言えばしているが、まったく別のソリューションを提案しているのだとも言える(たとえばこのソリューションはHTMLでは使えないのだ)。

ちなみに、MS明朝ver. 5も字体を切り替えることができる、つまり(新)(旧)の字体を混在させることができるのだが、私が利用するアプリケーションの中で対応しているのは、皮肉なことにAdobe InDesign CSだけだ。

こうやってまとめてみると、単純な正解というのはなかったのだろうということがよくわかる。トラブルがあると何でもMicrosoftのせいにしてしまいがちだが、この問題はMicrosoftが原因というわけではない。初めに述べたように、問題が顕在化したのは、Microsoftのシェアが大きかったからだ。Microsoftの対応が不誠実に見えるのは、そのユーザの大部分がフォントのことなんか考えないであろう人たちだからだ。

原因を追求されるべきは、印刷標準字体などというものを作って字体を統制しようとする日本国政府(国語審議会)か、それに従って、(定義から言って変更する必要のなかった)例示字体を変更したJISだろう(JIS漢字は「印刷」に特化したものではないのだから、印刷標準字体なんて無視すればよかったのだ)。

漢字の問題は、文字コードだけの話ではない。今のIMEでは「うそ」でU+5618(U+5618)が出る。携帯電話が第3,4水準漢字に対応するようになったら、「うそ」でU+5653(U+5653)を出すようにすることが現実的な選択肢になる(印刷標準字体をもう信するなら、こうしなければならない)。こういうことのほうが、字体の問題よりもはるかに深刻だと思う。Microsoftもジャストシステムも、そんなことだけはしないでおいてもらいたい。

追記:Appleは後になって新しい名前のフォントをリリースした。やれやれ。

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