磁気に反応する海洋生物にインスパイアされて

砂漠の惑星

WIRED、無事転生なされましたことをお祝い申し上げます。

サメを撃退できる希土類磁石(WIRED)

Herrmann氏がサメ研究用の水槽のそばに磁石を落としたという。すると水槽の中のレモンザメとテンジクザメが、即座に水槽の反対側に突進した。

このニュースを読んで、レム『砂漠の惑星』を思い出した人は少なくないと思う。

地球の生物学者にとって珍しかった唯一の点は、捕らえた魚が、磁場の強さのわずかな変化にも敏感に反応する器官をそなえていたことだけであった。(p.45)

WIREDのニュースを知っていて、それをふくらませて『砂漠の惑星』を書いたとしても、その想像力は十分尊敬に値する。こういう話を知らずにこの作品を書いたのだとすれば(そうなのだろうけれど)、その想像力は恐るべきものだと思う。

魚の話なんか実はどうでもよくて、読んで損はないから読んでもらうとして詳しい説明はしないけれど、今日でも違和感なく読めるこの作品が、「複雑系」などという言葉が流行るはるか以前に書かれたということ忘れてはいけない。

最近のSF作家ではイーガンが頭抜けた印象があるけれど、大森望『現代SF1500冊 回天編 1996‐2005』に、

レム的思考を現代に受け継ぐのがイーガンだけど、さすがに貫禄ではレムにかなわないかも(p.425)

とあるように、レムがまだ一枚上手かもしれない。

実を言えば、「複雑系」ですらどうでもいいことだったりする。この作品は、「SFとは何か?」という問いに対する答えの典型にもなっているのだ。2006年3月に亡くなったレムを追悼したSFマガジン 2006年08月号の、中村融「サイバネティックスの書法」の解説は次のような記述があった。

主人公は、あくまでも人類という種なのである

文学にはいろんなジャンルがあるけれど、その大部分は、人間・家族・民族・国家・人種を対象にしている。「種としての人類」を描けるジャンルは、SFのほかにはないのでは。だからみんな、来るべきコンタクトに備えて、もっとSFを読んだ方がいい。

東大教師が新入生に勧める本にSFが極端に少ないのは、きっとそういうことだ。

追記:ゴキブリは磁場が見える:渡り鳥と同様のシステム(WIRED)

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